平成11年度九州支部学生賞受賞者から一言



学生賞を受賞して
  金納明宏
  熊本工業大学工学部応用化学科:博士課程3年(社会人)

 このたび、私は、「抗癌剤を含有しないハイブリッド型リポソームの抗腫瘍効 果」というテーマで研究を行い、化学工学会九州支部より、運良く学生賞をい ただきました。今後、社会人ドクターとして研究を行っていかれる方々へ、私 の体験から感じたことを紹介させていただきます。
 私は、平成4年、熊本工業大学を卒業し、現在勤務しておりますパナファー ム・ラボラトリーズに就職しました。3年ほど務めた頃、博士の学位の必要性を 感じ、卒業研究の指導教授でありました上岡龍一先生に御相談し、社会人ドク ターとして入学することを決意しました。上岡先生は、ハイブリッド型リポソ ームの生みの親であり、すでに腫瘍細胞に対する抗腫瘍効果で画期的な成果を あげておられ、論文・総説のみならず、特許も取得され、医学部との共同研究 で脳腫瘍治療実験を進めておられました。
 パナファーム・ラボラトリーズは、主に医薬品の前臨床試験(動物実験)を 製薬メーカーなどから依頼されて実施する会社であり、研究を進める上で、会 社で取得した技術を大いに生かすことができました。また、会社は大学から車 で約1時間であり、休日や勤務終了後の深夜など、頻繁に大学に通うことがで きました。もちろん、御指導いただいた上岡龍一教授および松本陽子助教授、 サポートしてくれた学生諸氏の協力があったことは言うまでもありません。私 は、このような恵まれた環境の中で、積極的に実験し、結果を出すことができ たと思います。成果の一部は、学術論文誌「Drug Delivery System」および 「Biological Pharmaceutical Bulletin」、総説「ケミカルエンジニアリング、 特集(新しい研究開発と課題)」に共著者として名を連ねて掲載されております。
 多くの社会人ドクターは、会社から派遣されているためか研究に対し消極的 で自分自身の研究とすることができず、指導される先生や実験に協力してくれ る学生に頼ってしまうように見受けられます。社会人として会社の仕事が重要 であることは当然ですが、常に大学院の学生であるという自覚を忘れず、積極 的に実験を行いディスカッションをし論文にまとめるということが大事ではな いでしょうか。私自身、日頃、これらのことを忘れないように心がけておりま す。
 今後も学生賞のもとに、社会人ドクターと博士課程の学生の相乗効果により 研究が発展し、化学工学会が一層発展しますことを期待致しております。



受賞の喜びと今後の抱負
  山本盛夫
  九州大学大学院工学研究科化学システム工学専攻:博士課程3年

 化学工学会福岡大会、学生賞博士課程の部で学生賞を受賞したことに対して、 大変喜ばしく思っています。審査していただいた先生方、関係者の方々に感謝 いたしております。この賞は、詳細な審査基準を基にして選ばれたものですか ら、この受賞は私にとって大いに励みになると思います。プレゼンテーション は、それ自体の善し悪しで、研究自体の評価も違ってくると思いますので、社 会に出てからも私にとって非常に重要なものと考えています。
 今回、受賞できた要因を考えますと、やはり、場慣れしていることが一番に 挙げられると思います。学会発表と学生賞の発表では、多少趣も違ってきますが、 適度な緊張感を持つことができ良かったと思います。後、大きな声で発表する ことが重要だと考えています。小さな声だと何を言っているのか分かりませんし、 質疑応答の時でも、多少の迫力も加わりますので、自分の意見が通りやすくな るのではと思っています。
私に足りなかったものといえば、アピールが足りなかった、普通の学会発表風 になってしまったように考えています。その辺りをもうひと工夫すれば、より よいプレゼンテーションになっていたように思います。



学生賞を受賞して
  吉田耕平
  九州大学大学院工学研究科化学システム工学専攻:修士課程2年

 今回は学生賞を受賞することができ、非常にうれしく思います。質問に対し て十分な回答ができない部分もありましたが、高い評価をしていただき、今後 の研究生活にも大きな励みになることと思います。
 学生賞審査とは、その審査項目にもあるように、どのような姿勢で研究に取り 組んできたかを評価する場であったように思います。問題に対してどのように 考え、どのような実験を行い、結果をどのように捕えたのか、これが大切では ないかと思います(結果以上に)。私は高校受験、大学受験、大学の定期試験を 受けているうちに、頭を記憶することばかりに使ってしまい、一番肝心な考え るという行為を忘れてしまっていました。しかし、研究室で先生方と議論しな がら研究に取り組んでいくことで、頭が"考える"という行為を思い出しました。 自分で考えて研究していれば、質問に対してもなんらかの答えが出てくるはず ですし、発表をするにあたっての自信にもなるのではないかと思います。私は 来年から企業で研究をしていくことになりますが、"自分で考える"ということ を忘れずに頑張りたいと思います。



学生賞を受賞する?
  境 慎司
  九州大学大学院工学研究科物質プロセス工学専攻:修士課程2年

 修士の部での学生賞を受賞しましたが、何で受賞できたのかと考えてみると、 学生賞のためになにか特別な用意をするというのではなく普段の研究生活をど のように過ごすかということが大事だったと思いました。ということで、普段 どのようなことを心がけて研究しているかを簡単に書いてみようと思います。  まず、どんなにルーチン化されている操作でも、一つ一つをただの「動作」 として受け入れるのではなく、必ずあるその動作に含まれる「意味・意義・理 由」を考え“ホントに自分の実験ではその操作が必要なのか?”という疑問を まず持ってみることにしています。
 その上で必要と感じたものを取り入れる。また、私はなぜか高校の数学の教 育実習を経験していて、そのときの経験から「専門家」ではなく「高校生」に も自分の研究を理解してもらえるにはどのように説明すればいいのか、どこに 疑問を持たれるだろうかその疑問に答えるには?、ということを常に考えるよ うになりました。このことにどんな有意さがあるのかは分かりませんけど。あ とはとにかくまず全てを疑問の目で見てみるということです。 そんなことを心がけて生活しています。だからどうしたって言われるよな内 容ですが、とりあえず普段のこころがけでした。



学生賞とるには
  通阪栄一
  九州大学大学院工学研究科化学システム工学専攻:修士課程2年

 このたびは学生賞をいただき大変感謝しています。全体を通じて驚いたのが、 発表者全員がカラーOHPだったことです。昨年の発表会では、白黒のOHPもポツ ポツとあったのを見ていたので、1年で変わるもんだなと思いました。また、発 表のほとんどが生体関連の研究だったことも特徴的でした。
 ところで、学生賞をとるには?ってことで考えると、やっぱりいかに分かり やすく説明できるかでしょう。時間も7分と決まってるので、その中で難しい ことを話しても時間がかかるだけで、理解してもらえないかもしれません。審 査員の方々は一流の化学者の人ばかりでしょうが、素人相手に説明するぐらい でちょうどいいかと思います。
 もう1ついえることは、アピールです。目立つことが一番です。それが研究 へのやる気として現れると思います。
 以上、学生賞を通じて僕が感じたことです。後に続く方達への参考になれば なによりです。
 学生賞を受賞できたことは、自分への自信にもつながったので、これからさ らに向上心を忘れないようにしてがんばりたいです。